「黒皮の手帖」 | キャプテンズ・バー|オーセントホテル小樽【公式】メインバー
「黒皮の手帖」
2020.01.07

題名の由来は、タキシードに忍ばせる手帳のこと。私達は道具にこだわり、それは小物にもおよぶ。内ポケットにはモンブラン、ソムリエナイフ、名刺入れ、そして黒皮手帳・・・。全てお客様の目に映るものなので、品質には見栄を張ります。
手帳必携する習慣となったのは見習い時代に遡る。メインレストランのギャルソンで、テーブルの注文伝票をシェフに渡す際、フランス語で料理名を書かないとオーダーを通してくれない。プロの心得とはいえ、一日も早くバーカウンターに立ちたい一心で描き覚えた筆記体は、今も忘れることがありません。
それ以降、常に日々の出来事を残すのを習慣としてきた。
後輩に対しても、お客様との記録は手帳に書きなさいと指導するが、昨今の流れでは偏った見方との捉えもあるよう。その背景にはスマートフォンや情報技術の発達にて、手間なく記録を図れるようになった事だ。然しながら、バーという世界はプライバシーを第一とする所以、情報共有が過ぎると信頼を失うことも少なくないのだ。更に、バーテンダーの接客において、誰もが知りえる情報に頼っていると「薄っぺらい」と印象を下げかねず、この場合は、互いにしか知らない会話を添える事で「覚えてくれてるんだ・・・」と距離感を温めてくれるのです。こうして、年末の手帳を交換する日に、どれだけ真っ黒になっているかで仕事の質を確認するのです。

さて、手帳にどのようなことが記されているでしょう。

ページを見開くと、その日の出来事、記念日、好きなこと・・・。興味深い〇✕△△!顔を覚えるのに似顔絵を描いたりすることもあります。
特に多かったのが、先輩に叱られたこと、いつか見ていろ!と思って書いたメモは、全てが殴り書きとして残り後に全く読み取れない。振り返ると、大した事ではなかったのでしょうね。

・・・とは言いながらも、私自身が便利さに感け、昨今はメモをする習慣が疎かになってきているようである。その度に何か大切なものを忘れてしまいそうな気持ちに陥るが、そんな時こそ自身を振り返り、過去の手帳(自分)に助言を頂くのです。

お読みいただいてありがとうございます。みなさま、酔い一年になりますように。