この仕事に入るきっかけとなったこと・・・。タキシードのバーテンダーが魔法の杖ごとくシェーカーを操り、赤、黄、翠、橙色・・・と次々と生み出されていくカクテルに感動した。中でも、薄暗い店内で青く映し出された液体の輝きは、今も記憶に残る。
私がこの仕事に就いた1980年代は、カフェ・バーと呼ばれる業態が国内で台頭。これは、アメリカンスタイルのバーに例えられ、店内にはMTVという全米ミュージックチャート番組が映し出され、ブランドで身を包んだ若者達がカクテルを楽しむといったスタイルがトレンドとされていた時代です。流行メニューといえば、ジンフィズやマイタイ、チチという所ですが、人気を誇っていたのがタイトルに挙げたブルーハワイというカクテル。
飲み物にしては青く奇抜な色調、炭酸を加えるだけで出来上がる濃縮の瓶タイプが人気で喫茶店、ディスコ(今のクラブ?)など、技術を持たない大型店でも容易に提供が出来て重宝された。家庭でも「ひと混ぜ」で作れる手軽さは、おうちカクテルの先駆けとしてカクテルが大衆に広まっていく黎明期となる。
題名となるブルーハワイは戦後の経済発展後、国民の憧れとし注目され、ミュージックシーンでも世界的なロックスター、エルヴィス・プレスリーの存在が欠かせない。
当時、人種差別が問題視されていた時代、カントリーソングにアフリカンポップを掛け合わせたメッセージ性は世界の若者を熱狂の渦に包み込み、強い求心力を誇っていた。
エルヴィスはアメリカ本土のような差別社会がなく、且つ、東西のエッセンスが融合したハワイ島に魅了され、若くして亡くなるまで往来を重ね、島と発展的な関係を築いていった。その彼の軌跡の中でも印象深いのが、本人主演映画「ブルーハワイ」。この名を冠したカクテルを彼が定宿していたホテルのバーテンダーに作らせたエピソードも有名な説。
この夏、是非皆さんに楽しんで戴きたい一杯として紹介です。
今回のポイントは同じレシピでもグラスごとに異なるバリエーションを楽しむこと。但し、ブルーハワイが作られたストーリーに欠かせないBOLS社のブルーキュラソーという酒は是非とも使いたい。又、ベースには最近は癖のないウォッカの使用例が多いですが、当初のレシピ通り、やはりラムを使うと味わいに深みが出るでしょう。
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