今回のテーマは喉越しスッキリな一品。日本の居酒屋では「とりあえずビール」が一般的も、世界で観た場合、人気No.1といえば「ジン・トニック」と言って過言ではありません。所謂、ジンに相性が溶け込んだトニックウォーターを割ったカクテルですが、人気の理由は何といってもジンの香気成分となる「ジュネヴァ~Genever *ジンの語源(日本語:杜松の実)」にあります。多彩なボタニカルの薬効が心身に期待でき、黄昏時に空腹を促すアペリティフや、最近では、美や健康を養う「癒しの水」としても愛されています。
ジンの変遷を紐解くと、1660年、オランダの王立ライデン大学、シルヴィウス博士によって生まれた史実がある。当時、熱病の特効薬とされていた「ジュネヴァ *ジンの語源です )が利尿効果に長けているとされ、博士は高濃度のスピリッツを造り、香気成分を抽出、医薬として飲ませた経緯が始まりです。これが巷で大人気となり、噂を聞きつけた英国人が自国へ製法を持ち帰り、より性能が高い蒸留器を用いた事で、ライトな酒質に仕上げ、一躍、世界に広まったと謂われています。これが現在、世界中で消費される「ドライ・ジン」です。
18世紀、欧州で大流行したマラリアの予防にと、トニックウォーターに含まれる「キニーネ」の薬効が治癒に至るとされ、故 ウィンストン・チャーチル元英国首相に「イギリスは歴史上、ジン・トニックに命を救われてきた」と言わしめた諸説も忘れられない。
更に、アメリカに渡ったジンは19世紀、爽やかな風味が人気を博し、カクテルのベース(土台)材料として使われるようにあり、今に伝わるクラシックカクテルの黎明期を築いたとされる。
日本では戦前戦後、進駐軍や将校向けのホテル・バーにて、ジン・トニックやマティーニといったカクテルの材料として扱われるようになり、我が国のバーテンダーが腕を磨くきっかけもなった。高度経済成長期以降はトリス・バーといったサラリーマン向けのバーの台頭により、ジン・トニックはハイボールに次いで浸透し、我が国の飲料文化や社交に一石投じたと振り返る。
現在は、当地ごとの産物を風味に反映させた小規模蒸留所のクラフト・ジンが流行となっており、そのバリエーションは多種多様で、嗜好の広がり見せています。…然し、私が日々好んで愛飲するのは、やはりトラディショナルな ジン・トニックです。ピカピカに磨き上げたタンブラーに程よくリンスされた氷を加え、冷凍ジンにトニックウォーターをひと混ぜ…。バースプーンで、ひと掻きし、ライムを絞り入れたら完成です。新緑が瑞々しく感じ、自然の力が漲る今こそ一番の飲み頃です。ぜひキャプテンズ・バーでお待ちいたしております。